上田学園 見上クラス
《 異文化コミュニケーション 》

2007年秋学期
本物の文化に触れ、人間の真実に迫る!

Johann Sebastian Bach 《Matthäus-Passion BWV 244》 (1727)
バッハ 《マタイ受難曲》 ~「新約聖書」にみる人間の真実~


 第15回  2008年2月26日 

◆ 2月21日(木)、学生から再びメールが送られてきた。

Title: 来週の授業でのお願いです。

こんにちは。上田学園の根本です。いつもお世話になります。
何度も申し訳ないのですが、また来週の授業で見上先生にお話を伺いたいと思いメールしました。
今週の授業後、みんなで再度話し合いをして、いくつか意見が出ましたのでお目をお通し下さい。

上田学園 生徒一同
荻原 裕介
平野 毅
八巻 健太郎
高桑 正俊
根本 麻衣

2008.2.21(木)
根本 麻衣 文書

『みんなで話し合った内容』

19日に見上先生に答えていただいた文章が、私たちには難しかったので、易しく説明していただけませんでしょうか。
また、前回にもお願いした『分量を減らしてもらいたい』という件です。

他にも個々で意見が出ましたので、箇条書きさせていただきます。

・ ひとつの文章に時間をかけて、どういう文章なのかを深く理解して、そこから見える当時の状況や文化などを想像したり、感じたりしたい。
・ 例文と提出した翻訳の比較をもっと楽しみたい。
・ 同じ文章を違う言語で比較したい。その中で語源や文化にも触れて欲しい。
・ 一人一人がより考える時間を作って欲しい。
(授業の中で辞書を使う・想像で翻訳する・読み手がわかりやすい、おもしろいと思う翻訳をするなど)
・ プロジェクターでの口頭説明だけでなく、ホワイトボードを使って解説してもらいたい。

見上先生の豊富な知識をたくさん吸収していきたいという気持ちと、いろいろなお話をしていただけるとそれだけで勉強になるという思いが皆にあり、今回のようなメールになりました。
見上先生にも授業に対するお考えがたくさんあると思うので、次回の授業でもっと詳しく教えていただきたいなと思っています。

 ◇ 先週の回答は、やっぱりむずかしかったか。それで、じっくり味わいたいという要望は了解です。

ラテン語のことわざで、"Festina lente."(ゆっくり急げ=急がば回れ)は、よく使われます。まさにこれですね。実は、これまでの流れは、一定の量をこなすことで全体的な見通しを得る、というところに焦点を当てていました。この段階はそろそろ抜け出て、歩みをゆっくりにして、少し景色を味わうことにしましょう。

みんなが出してくれた要望は具体的だし、物凄く本質的です。このようにはっきり問題点を洗い出して、文章にして伝えるということは、本当に大切なことです。社会に出たときに一番役に立つ。特に、何か問題が生じたときに、書くことによって自分の考えを客観的に見て、冷静な対処をする可能性が高まります。

それに、口だけで伝えると、何も証拠が残りませんから、後で言った言わないの非建設的な論議に時間が取られてしまうことがあります。

そうですね。みんなからの要望をあらためてまとめてみましょう。  

1.ひとつの文章に時間をかける。
2.どういう文章なのかを深く理解する。
3.そこから見える当時の状況や文化などを想像し、感じる。
4.例文と提出した翻訳の比較をじっくり楽しむ。
5.同じ文章を違う言語で比較する。
6.その中で語源や文化にも触れる。
7.一人一人が考える時間を作る。
8.授業の中で辞書を使う。
9.想像で翻訳する。
10.読み手がわかりやすい、おもしろいと思う翻訳をする。
11.プロジェクターでの口頭説明だけでなく、ホワイトボードを使って解説する。

うーん、これは宝物の”御言葉集”ですね。イエスのことばよりもありがたい。それに僕の授業の傾向もよく把握してくれていますね。

ただし、頃合がむずかしくて、あまり細かくやりすぎると、全体像として何を言っているかわかりにくくなってしまうことも危惧されます。

とりあえず、《マタイ受難曲》と「宗教と知」に関しては、少しやり方を変え、分量をやや減らしつつ、今年度中にくぎりのいいところまで走ることにします。

★ 今日の課題 「争わぬイエス」  

Nr.28 Und siehe, einer aus denen, die mit Jesu waren (p.106-108)
Nr.29 O Mensch, bewein dein Sünde groß (p.109-134)


Nr.28       シンボル
  Evangelist Und siehe, einer aus denen,
die mit Jesu waren,
reckete die Hand aus
und schlug des Hohenpriesters Knecht
und hieb ihm ein Ohr ab.

Da sprach Jesus zu ihm:
ausrecken のばす
schlug 打つ
Knecht 下僕
abheben 切り落とす
Ohr 耳
怒った者がいた
手を出す
殴る
耳を切り落とす
右耳(ルカ、ヨハネ)
ペトロ(ヨハネ)
  Jesus Stecke dein Schwert an seinen Ort; denn wer das Schwert nimmt, der soll durchs Schwert umkommen.

Oder meinest du,
dass ich nicht könnte meinen Vater bitten,
dass er mir zuschickte mehr denn zwölf Legion Engel?

Wie würde aber die Schrift erfüllet?
Es muss also gehen.
stecken 差し込む
Ort 場所
umkommen 命を落とす

bitten 願う
zuschicken 送る
Legion 軍団

Schrift 書物

威嚇
特に武器による威嚇
暴力に関するイエスの考え

聖書の預言の成就(マタイのみ)
なぜ神の子は力を発揮しなかったのか?
「天使の12軍団」とは何か?
  Evangelist Zu der Stund sprach Jesus zu den Scharen: Stunde 時間、とき
Scharen 群集
 
  Jesus Ihr seid ausgegangen als zu einem Mörder,
mit Schwerten und mit Stangen, mich zu fahen;
bin ich doch täglich bei euch gesessen und habe gelehret im Tempel,
und ihr habt mich nicht gegriffen.

Aber das ist alles geschehen,
dass erfüllet würden die Schriften der Propheten.
ausgegangen 外出する
Mörder 殺人者
fahen 捕まえる
täglich 毎日
gesessen 座る
gelehret 教える
Tempel 寺院
gegriffen 捕まえる

geschehen 起こる
erfüllen 成就する

下僕たちはどういう権限があって、イエスを逮捕したのか?
一旦、犯罪者の烙印を押されてしまうと人間はどうなるのか?
そもそもなぜ寺院で人々を導いていたイエスは捕まえられなかったのか?

ルカ伝:
「そこでイエスは、『やめなさい。もうそれでよい』と言い、その耳に触れていやされた。」(奇跡行為)
祭司長、神殿守衛長、長老たちに向かって、「だが、、今はあなたたちの時で、闇が力を振るっている。」
  Evangelist Da verließen ihn alle Jünger und flohen. verließen 捨てる
flohen 逃げる
なぜ弟子たちはイエスを捨てて逃げてしまったのか?

特設コーナー
”宗教”と”知”
~日本のある音楽理論研究者が書いた宗教論を読んで、人生について考える~
Activities and Fruits of the Intellect―My View of Music Theory (1996)

■ 今日の課題

16 1 Scientific intellect,
so far as it subjects everything to criticism and verification,
is effective only
when it is free from personal interest or inclination ("Wertfrei" of Max Weber).

scientific 知識
intellect 知性
so far as ・・・する限りでは
subject 服従させる、さらす
everything 一切
criticism 批判
verification 立証、検証
effective 効力のある、実効性がある
free from... ~からの自由 free from fear and want 「恐怖と欠乏から免かれ」(日本国憲法)
personal
interest 利益
inclination 嗜好、好み
Wertfrei 没価値性 worth+free


特集 現代社会
ニューエイジ思想の多層的な影響を考える
”ニューエイジ・ムーヴメント(New Age Movement)は世界を救うか?”

■ 今日の課題

見上潤  미카미 준  Mikami Jun  Миками Джюн


2008/02/26
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