ことばの覚書帳
2004年12月22日

12月22日(水) 「基本となる母音というものはあるのか?」

 アラビア語は3つの母音しかない。
コリア語は基本となる2つの母音から21個の母音字が作られる。
そして日本語は5つの母音がある。 

  ・・・人は生まれたとき、「アー」という声をあげるから、基本は「あ」ではないか、と予想をつける。
いきなり、「イー」とか泣かれることは想像しにくい。
「ウー」、ときたら苦しそうだ。
まして、「エー」だの「オー」だのは想像しにくい。
 
 明らかにそれぞれの母音には異なる「意味」がありそうである。

 さらに気になるのが、「あいうえお」の順番である。
これには意味があるだろうか? 
「あいう」はアラビア語の母音と一致する。
そういわれれば、「えお」はなんだか「大人びた」母音のような気もしてくる。

 5つの母音の順列組み合わせも考えてみたい。
2音節で25通りの組み合わせ。
ある母音から別の母音への「移ろい」を考え始めると、これはもうベルカント歌唱法の世界!

詳しくはドルチェカント研究会で展開する内容だが、ちょっと簡単な表を作ってみる。

 
アア(嗚呼) アイ(愛、藍) アウ(会う) アエ(会え) アオ(青)
イア イイ イウ(言う) イエ(家) イオ
ウア ウイ(有為) ウウ

ウエ(上、飢え)

ウオ(魚)
エア エイ エウ エエ エオ
オア オイ(甥、老い) オウ(追う、負う、王?) オエ(追え) オオ

 子音を含めると、たった2音節でも非常に多種多様な世界が広がる。
かな文字は70個あるので、2音節の場合の順列組み合わせは4900個にもなる。

日本語においてはどのような組み合わせがよく使われるのだろうか? 
そんなことを調べても、日本語がうまくなるわけではないが、
その音の分布の仕方には「日本語の音感覚の美学」の秘密が隠されているはずである。

 こうした「自然科学的」な研究も、
芸術的なセンスがなければただのデータの羅列にしかならないだろう。

音とは、「色彩的」なものである。
それぞれの母音・子音には「色」があって、
その組み合わせによって様々な「色模様」が浮かび上がってくるのである。

 ・・・言語とは人類の芸術品の一つである。

見上潤 미카미 준 Mikami Jun Миками Джюн