うれし恥ずかし、恋には憧れ

 

 

ある朝、早く来た学生がホームページを開けている。もう一人は窓を開け、空気を入れ替えている。突然「ぎゃー!やめてくれー!」という朝には似合わない、絹をも引き裂かんばかりの男の子の悲鳴が。つづいて、「ひゃー。オレのも出てるー!」ともう一人の声。

前日、夕方遅くまで皆が何時間も呻吟して授業の中で作り上げた訳詩が、その科目の担当の先生の手によって、そのまま、ホームページ上に公開されたらしい。原文はフランス語(イタリア語?)のかなり色めいたお話らしい・・・が、学生の訳詩はどれもこれも、どう色っぽいのだか、何をしている描写なのか、わかるような、わからないような、摩訶不思議な恋の歌になっていた。

そういえば、この授業の先生と“卒業記念打ち上げ日帰り小旅行”をすることになった学生たちは、アイディアを出し合った挙句、「東京湾サンセットクルーズ」に行くという。結局男ばかりの6人が、桜も咲き始めたうららかな春の午後、東京湾のディナークルーズに出かけていった。留守番の上田先生が笑いながらひとこと、「ああいうのは普通、デートで行くモンでしょう。それとも、彼女が出来た時の、予行演習かしらね。けっこう、けっこう。」

翌日、学生曰く、「沖に出たらけっこう風が強くて、でも、風になびく先生(ちなみに男性)の髪がかっこいいって、皆で盛り上がったんすよ。」将来、彼女が出来たら学校に連れてきてね。まだ遠い未来のような気もするが。

 

 

 

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