ふつふつと

 

 

今、トンネルの中にいるような気持ちだけれど、出口が果たしてあるのかないのかさえもわからない、とつぶやく人に出会った。

なぜ動かないのかわからない、と人からは言われるけれど、動けるものならもちろん動いています、と唇をかんだまま、目だけを上げてきっぱりと言う人に出会った。

私が上田学園と出会って、偶然オオヤになって、2年余りが過ぎようとしている。
毎日学生の顔を見て、彼らの旺盛な食欲を見ている。誰もいない教室でひとり音楽をかけながら歌っている姿を見て、時には、夜中に宿題をやりながら机に突っ伏している寝顔を見ている。そうしているうちに、自分でも思いもかけないことに、何か書きたいという思いがふつふつと湧いてくるようになった。

庭に咲く木蓮の花をかじりにヒヨドリがやってくること、学生がふっと口にした一言のこと、それを聞いた先生方の目がきらっと光った瞬間のこと、私だけが近くで見ているのでは申し訳ない、と切に思ったそんな出来事たちを、私自身の日常生活の中に織り交ぜて、ことばにしてみたいと思う。

お手元から、大切なお子様を手放して上田学園に預けてくださっている親御さんに、そして、今、トンネルの中にいるように感じていらっしゃる方に、また、動けるものならば動いている、と思いながらこのホームページを偶然訪れてくださった方に、私からの小さな便りがとどけば幸いである。

 

 

 

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